2003年度の地方出版・小出版

少部数流通のこれから

 出版物の販売流通環境が激変しつつあります。専門取次や地域教科書配給会社の経営難、地域有力書店群の廃業や倒産に見られる小売り環境の悪化が顕著です。地元書店がなくなり大規模・中小規模(駅前やロードサイド)の資本力のあるチェーンしか存在しない地域も出はじめています。出版流通や販売の事業が経営的に苦しくなり、このことは読者や出版内容にも変化をもたらしています。雑誌の不振もありますが、世の中のデフレ傾向の定着とともに、買われる本の価格も低下傾向にあり、主に売れる本がPB(ペーパーバック)商品に移行し、文庫・新書・コミックなどが書店の店頭を占有しています。これらの新刊はほぼ月単位で提供され、取次もその機械化処理の体制(ロット配本と自動化返品処理)を確立しつつあります。このような、大量流通を基本とする委託(返品可能な)商品は機械化することで、安価な効率的流通システムを作れますが、PB商品以外の多種多様な単行本は、手間とコストがかかるため「注文流通」へと追いやられ、極力、返品の出ないようにむだな配本は控えるという体制が築かれつつあります。それにはインターネットを使った在庫管理と受発注システムが大きな役割を果たしています。確かに、いままでほとんど注文のこなかった既刊本の注文が増加し、在庫の消化に寄与しているという悦ばしい現実もありますが、このルートのシェアーは15%程度で、発行部数の全て消化するのは非現実的です。また、ネット販売に向いた種類の本、向かない本、書店の店頭や、書店外のルートで売れる本、図書館や特定多数の人々だけで売れる本などもあります。これからは、出版社がそれぞれの本の読者層を見極め、的確に情報を届けることで、木目細かな販路開拓をしてゆく必要があります。かつてのように、全部数を書店ルートだけには頼れないのが現実です。

 しかし、人の営みのあらゆる場面でまだまだ出版物が必要なことも事実です。本が生み出され、読まれ、活用されることによって進歩や豊な社会が生み出されることは歴史が証明するところですし、先進諸国においても、いまだその力は衰えていません。安価な本の販売にシフトしつつある市場が大勢のなかで、少部数で高めの本の流通システムを作り出すことは大変なことですが、大型店・専門店・ネット書店など単行本(書籍)を販売する販者との緊密な関係の再構築、正確な在庫情報の開示、確実で迅速な在庫確保と流通など、技術の進歩、社会や読者の変化に対応しつつ、21世紀型書籍流通システムのあるべき姿を求め、挑戦・試行し、努力することが肝要です。

2003年度の地方出版・小出版