2003年度の地方出版・小出版

これからの地方出版

 地方の出版が活発になってそろそろ30年を迎えます。地方出版を担う世代は大きく三世代に分けられます。最も若手の「地方出版第三世代」の代表格である、鹿児島の南方新社や岡山の吉備人出版が今年(2004年)で創業10年を迎えます。南方新社はこれまで110点、吉備人出版は160点の本を作ってきました。両社の社長はほぼ同世代です。この第三世代は1980年代に青春を体験した世代で、いま、40代ですがこの世代の出版社数は多くはありません。

 地方や地方出版にとって、60年青春世代(第一世代)が担った70年代から80年代の世界は中央(東京)が中心、70年青春世代(第に世代)が担った80年代〜90年代はその揺り戻しとしての地方も元気であり、また国際化し、文化のボーダレス化が進んだ時代でした。では、地方出版第三世代、つまり80年青春世代が活躍している90年代から21世紀初頭はどんな時代なのか? 特徴的なのは、この人たちの出版は、前の二世代以上に地域やそこ住む人々の生活や活動密着型のように感じます。地域といっしょに学び・検証し新たな視点を作り出していると言えるのかも知れません。そして、地域といっても、かっての県という行政単位というより、ブロック、あるいは海岸線や川や道、あるいは人の繋がり、テーマ・課題というようものの共通性などによる広がりのように感じます。例えば、南方新社は島もの(離島もの)出版も多いのですが、それが東京の小笠原の本を出したり、吉備人出版は考古学関係書が多く、吉備の国が中心ですが中国地方全域をカバーする企画も多くあります。地理的境はあいまいなのですが、届ける読者層はポイントが定まっているというように言えます。「失われた90年代」とよく言われますが、今の地方(地域)の現状を見ますと、60年代以降の高度成長の40年間が壊してしまったものが、それぞれの日本の「土地と人々が持っていた地域性」であり、地方出版第三世代は、ほぼなくなってしまったそれを、出版を通して再び編み戻しているような感じがしてなりません。「地域的なるものの再構築」がこれからの地方での出版の課題のような感じがします。

2003年度の地方出版・小出版