地方・小出版の現況
〈出版社の加入状況〉
センターの29年目の取扱い社は1020社になります。新規加入は49社(東京23社・地方26社)あります。最近の特徴は、事業としての出版社は減って、団体や集団による非営利の出版が増加しているます。今年は東京の新規出版社の加入が少なく、地方の新規加入が多いのが目立ちます。地方でも、地域出版ではなく専門ジャンルに特化した出版が成り立つ傾向にあります。昨今の情報流通・物流システムの進歩によることが大きく影響しています。
契約を解除する出版社も多くなっています。経営不振による倒産・廃業もありますが、小規模出版や兼業出版の多くはやはり一代ということで、創業者の引退や死亡などで跡継ぎがおらず「暖簾をたたむ」ケースが続いています。また、書店・印刷所・企業などの兼業出版で本業の業績の悪化によるものもあります。明らかに昨年に取扱い不能となった社は東京17社、地方10社の合計27社です。加えて、ほぼ活動停止と見られる社が16社あり合計43社となります。また、最近は出版を立ち上げたものの、数年もたたずに廃業という社も目立ちます。きびしい環境の反映です。
〈出版点数〉
今年の新刊取扱い点数は5.1%の増加です。東京対地方の点数比は前年の34.3%対65.7%に対して今年は39.2%対61.8%で、地方の出版点数が減少していますが、東京の出版社の周辺(関東6県)地方への移転が大きな要因で、地域出版的本が減少していることではありません。逆に、新規契約を見ても地方での出版が増加しつつあるのが現状です。契約出版社1020社のうち今年一点でも新刊書籍を出した社は書籍が555社、雑誌が145社です。雑誌のみの社が数社ありますが、約6割が新刊を出したということになります。取扱い社で最も新刊の多い社は161点、10点以上出した社は100社です。雑誌発行社で最も多い社は年間31点、年間12点(月1点)以上の社は29社、その他隔月、季刊の発行社が53社です。
地域別に見ますと、北海道と中部、北陸、関西の減少が目立ちます。出版点数のかって多かった専業、新聞社系出版社の新刊減によります。東京が増加しているのは、少部数・多点数出版の傾向がよりハッキリしつつあることです。沖縄の出版は今年は新刊発行の多い社、シリーズものを出す社が多く、活発でした。
分類別で伸び率の高いのは「哲学・宗教」「歴史・地理」「社会」「産業・工業・技術」「自然科学」です。それぞれ専門書と呼ばれるジャンルで少量、多種類の出版が増加しているということです。少部数でも出しておく価値のある本は採算に合わなくても出そうという傾向が顕著です。前年と比べ前年比48.5%減の「児童・学参書」は多数発行の社がないことによります。