ふるさとの出版物が活躍する日
私たちは今年の2月から1カ月間「郷土コンテンツ配信実験」を行った。
地方でがんばっている人たちの優れた出版物を電子的に配信しようという狙いだ。
実験は、群馬県南牧村(書籍電子化=みやま文庫、上毛新聞社)、栃木県鬼怒川温泉(書籍電子化=随想舎)、長野県須坂市(書籍電子化=須高母親文庫)、福島県会津若松市(書籍電子化=歴史春秋社)の4カ所で行われた。
地域のCATVで村民に読書の機会を与えようと努力している人、温泉ホテルを宴会の場ではなく長期滞在型のリゾートへ変えるために郷土の歴史を部屋で読めるように考えている人、学校教育の中で、ふるさとの民話を学び、コンピュータを自由に扱える子供たちを育てる最初の取っ掛かりにしようとがんばっている先生たち、ホテル内電子図書室を実現した人たちなどに支えられて、実験は成功裏に終えた。参加した地方のメンバーから、実験後、終了するはずだった「郷土コンテンツ配信協議会」の継続が提案され、今後さらに仲間を広げて、商用化を実現していくこととなった。
商用化は、地方出版社がすでに出版している本を、私どもがそのままスキャナーで読み込んで電子化し、データ圧縮、コピー防止等のセキュリティを組み込み、インターネット上で運営する「10daysbook」サイトで発売をする。全国どこからでも、誰でも購入でき、パソコンで読んだり、また最近話題の松下電器の「Σbook」(携帯読書端末)で読むことも出来る。
すでにネットワークはインターネット上のさまざまなサービスプロバイダー、大型書店のホームページ、地方図書館や、レストラン、全国へ展開されているホテルの客室などに広がっており、そこからも購入することができるのである。
いつまでも大手が偉くて中小が駄目とか、中央が優れていて地方は遅れているとか、高いところから低いところへ何かが流れるという価値観が崩壊し始めているのだ。
いつまでも中央の出版社の出版物が「いいもの」であり続けるわけではないのだ。
やがて確実に、小さいながらも地方の「本物の」出版物が中央の出版物と同条件下で競争をしていくことになるだろう。
東京や大阪に出て行った人たちが、いつでもふるさとの本を手に入れることが出来、さらにヨーロッパだろうがブラジルだろうが、インターネットを通じてふるさとの「訛り」懐かしい本を読むことができる。
いつでも、誰でも、どこでも、どんなものでも手に入れられる。電子書籍ビジネスはそこへ向かって進んでいると言っていいだろう。
出版は多品種少量商品の典型である。であるがために「ブツ」の在庫管理や返品で宿命的に苦しい経営をせざるをえない。電子書籍こそ新しいネットワークの時代に、こうした問題を解決する唯一の手段なのだ。
一時は都会のマンションのような出版物がいいのだと思われてきた。しかし、いまや会津の古民家の持つような本物の物語に光が当たり始めている。会津だけを特別にほめるわけではないのだが、明治の建物が多く残る町を歩きながら、文化が地方に生きていることを感じた。地方の地に足の着いた多様な「電子書籍」の時代がそこまでやってきている。
「郷土コンテンツ配信協議会」への皆さんの積極的な参加をお待ちしています。
(問合せ先=03-5283-9623 久保田)