「郷土の電子出版」の時代はじまる!

電子書籍は在庫も返品も必要ない

私は、4年前に長年勤めた出版社をやめて、電子書籍の配信会社を作った。

出版社は紙の出版物の返品在庫に苦しめられている。もしこれが「電子コンテンツ」になったら、問題はほとんど解決するはずだ、という信念からであった。

昨年までは中央の出版社の名作マンガや小説などを電子化し、配信してきた。

インターネットの普及やブロードバンド(広帯域通信)の広がりに沿って、読者は急速に増えてきている。みんなが見て見ぬ振りをしているのではないかと思うほど、騒がれないまま水面下での変化は大きなうねりを伴って動いている。

これまでのビジネスというものは「物理的なネットワーク」を築ける体力のある企業が市場を支配してきた。銀行の全国支店しかり、巨大スーパーしかり、ブランドメーカーがそうであった。しかし、インターネットの時代がやってきて、企業体力がなくとも誰でもが「全国ネットワーク」に参入できることになった。ブロードバンドで24時間、外の市場とつながっている。夜中でもモノが家のパソコンから購入できるなどということは、今まで誰も経験したことがなかったことなのである。社会の深いところで地殻変動が起こっているのである。

もともと紙に印刷をして読者の元へ物語を送り届けるコンテナー(輸送するパッケージ)として本があった。もし作家の書いた物語を電子的コンテナーに置き換えたら「物質としての本」は必要なく、ブツを在庫する必要もなく、返品もいらない。これが「電子書籍コンテンツ」ビジネスのポイントなのである。

インターネットという誰でもが使えるネットワークと、物流が必要なくなる電子書籍にしたならば、出版業も企業力などはあまり大きな問題にならないという時代を迎えているということだ。

まさに地方出版物の時代が来たのだと言ってもいい。

市場での勝負は、物理的ネットワークを支配している大手出版社が占有するのではなく、本物の本を誰が出しているかが最後の分かれ道になるのだ。

郷土の電子出版